「会社案内を作り直したいので、去年の現場写真をもらえますか」。この一言から、社内の探索が始まる会社は少なくありません。前任者のパソコン、共有サーバーの奥、社長のスマホ、当時の制作会社への問い合わせ。半日かけて探して、結局見つかったのは解像度の足りない縮小版だけ、ということもあります。
これは整理整頓の話ではありません。撮影したときにお金を払った写真、作ったときにお金を払ったロゴが、使えないまま眠っている。つまり一度買ったものを、必要になるたびにもう一度買っている状態です。効率が悪いという以上に、単純にもったいない。
素材が見つかる会社と見つからない会社の差は、センスでも人員でもなく、置き場所とルールを一度決めたかどうかだけです。決めるのは一日で終わります。
なぜ素材は毎回行方不明になるのか
理由はほぼ3つに集約されます。
ひとつめは、素材が「案件ごと」にしまわれているから。「2024年会社案内」「展示会用データ」といったフォルダの中に写真が閉じ込められると、その案件を覚えている人しか取り出せません。写真は案件の持ち物ではなく、会社の持ち物です。
ふたつめは、納品データを受け取った人の手元で止まっているから。制作会社から届いたデータを担当者が自分のパソコンに保存し、そのまま異動や退職で行方不明になる。ロゴのデータがこのパターンで消えるのは、本当によくあることです。
みっつめは、名前が付いていないから。「IMG_4821.jpg」が200枚並んだフォルダは、あっても無いのと同じです。誰も開かないので、結局スマホで撮り直すことになります。
置き場所は「会社の棚」を1つだけ作る
やることは単純です。クラウドストレージに、会社全体で1つの素材置き場を作ります。担当者の個人フォルダではなく、会社のアカウントの下に置くこと。これが最初の一歩で、ここを外すと後の整理が全部無駄になります。
中身の分け方は、案件ではなく種類で切ります。最低限これだけで足ります。
- ロゴ・基本デザイン:ロゴデータ一式、会社で使う色や書体のメモ
- 写真:社屋・店舗、スタッフ・集合写真、商品・サービス、現場・施工
- 動画:撮影した元データと、書き出した完成版
- 文章:会社紹介文(長短2パターン)、代表プロフィール、沿革
ここで重要なのが、ロゴと写真は「元データ」を必ず残すことです。ホームページに載せるために小さくした画像は、看板や印刷物には使えません。制作会社から納品を受けるときは、加工前の元データも一緒に受け取り、この棚に入れてください。何を受け取るべきか分からない場合は、コンテンツ制作を頼む段階で「元データも納品対象に含めてください」と伝えるだけで通ります。
名前の付け方も一度決めます。「日付_内容」で十分です。20260410_本社外観のように書いておけば、半年後の自分が探せます。凝ったルールを作ると続かないので、これ以上増やさないほうがいい。
貯める流れを、業務の中に埋め込む
棚を作っただけでは、3か月後に元に戻ります。素材が増える瞬間は決まっているので、そのタイミングに動作を紐づけます。
現場に行ったら撮る。施工、納品、イベント、打ち合わせ。スマホで構いません。横向きで、被写体の周りに余白を残して撮っておくと、後からサイトでもチラシでも使えます。月に数枚でも、一年で数十枚の資産になります。
納品を受けたら棚に入れる。制作会社やカメラマンからデータが届いたら、その日のうちに棚へ。ここを後回しにすると永久に後回しになります。
使ったら戻す。パンフレットや提案書を作るたびに、そこで書いた会社紹介の文章も棚に入れておく。この蓄積が効いてきて、次の制作物の下書きが要らなくなります。
写真の仕分けや説明文の作成といった手間の部分は、いまはAIに任せられます。撮った写真をまとめて渡して内容を書き出させる、動画から使える場面を拾わせる、といった作業は現実的な精度で回ります。AI業務自動化の入り口として、こうした「溜まっているけれど手が回らない仕事」から始めるのは筋がいい選択です。
整っていると、何が変わるか
まず、制作物のスピードが変わります。ホームページのリニューアル、採用ページの追加、展示会のパネル。素材が揃っていれば、打ち合わせの当日に「これを使いましょう」と話が進みます。素材待ちで2週間止まる、が無くなるだけで、進み方が別物になります。
次に、見え方が揃います。同じロゴ、同じトーンの写真がサイトと印刷物と提案書で使われていると、会社の印象は静かに積み上がります。ページごとに写真の雰囲気がばらついているサイトは、それだけで所帯が小さく見えてしまう。逆に素材が揃っている会社のホームページは、規模に関係なくきちんと見えます。
そして、人が変わっても困らなくなります。担当者の頭とパソコンの中にしか無かったものが、会社の棚に移る。これは引き継ぎ資料を作るより手軽で、効果が長く続きます。
まとめ
自社の素材が見つからない状態は、能力の問題ではなく仕組みが無いだけです。やることは、会社のアカウントの下に1つ棚を作り、種類で分けて、日付と内容で名前を付ける。そして納品を受けたら入れる、現場で撮ったら入れる、という動作を決める。これだけで、撮り直しと作り直しの出費は止まります。
一度買ったものを二度買わない。それだけで、次の一手に回せるお金と時間が出てきます。
自社にどんな素材があって何が足りないのか、外から見た整理が必要なときは無料相談でお聞かせください。棚の作り方から、次に撮っておくべきものまで、一緒に洗い出します。
