朝いちばんにメールを開くと、問い合わせが12件。心が少し動いて中を見ると、11件が英語の意味不明な文章と、怪しいURLでした。残りの1件も、たぶん機械が送ったものです。
これが毎日続くと、何が起きるか。通知を見なくなります。フォルダを開かなくなります。そして、ある日そこに混ざっていた本物の問い合わせを、まるごと見落とします。
スパムの本当の被害は、削除にかかる数分ではありません。受信箱への信頼が壊れることです。ここを放置したまま「集客を強化しよう」と広告を出しても、入口が詰まっているので意味がありません。
対策には、効果が大きくて副作用の小さい順番があります。上から順に潰していきましょう。
まず知っておく:相手は人間ではない
対策を決める前に、敵の正体を分けておくと判断が早くなります。
届くスパムのほとんどは、人が一件ずつ手で書いているものではありません。世界中のサイトを巡回して、<form> というタグを見つけたら片っ端から送信ボタンを押していくプログラムです。あなたの会社が狙われたわけでも、業種が原因でもありません。ただ「フォームがそこにあった」だけです。
ここが重要で、相手が機械なら、機械にしかできない挙動を見つけて弾けばいいということになります。人間の訪問者に我慢を強いる必要はない。この前提を持っていない会社が、「入力項目を増やして面倒にすればスパムは減るだろう」という、いちばんやってはいけない方向に進んでしまいます。
ごく一部、人手で送ってくる営業メールもあります。これは技術では止まりません。後述するように、運用側で処理する話です。
対策の順番:上から3つで、たいてい止まる
1. ハニーポット(見えない罠)を仕掛ける
人間には見えないが、プログラムには見える入力欄をフォームに1つ隠しておきます。プログラムは「空欄は全部埋める」という乱暴な動きをするので、そこに何か入力されていたら機械だと判定して捨てる。訪問者側の手間はゼロ、表示も何も変わりません。副作用がほぼない対策なので、まずこれです。多くのフォーム用プラグインに標準で備わっています。
2. 送信スピードを見る
ページが開いてから送信されるまでの時間を測り、たとえば3秒未満なら弾く。人間はどんなに急いでも、名前と内容を書くのに数秒はかかります。プログラムは一瞬です。これも訪問者には何も見えません。
3. reCAPTCHA などの判定を、控えめに入れる
ここでようやく外部の判定サービスです。近年のものは、画面に何も出さず背景で怪しさを採点する方式が主流になっています。信号機の画像を9枚から選ばせる、あのタイプは最後の手段だと考えてください。あれは訪問者にとって純粋な苦痛であり、高齢の決裁者ほど途中で離脱します。
この3つでだいたい9割方は静かになります。うまく動かない、そもそもどれが入っているか分からないという場合は、フォームの設定を一度見てもらうのが早いです。Web制作の運用では、この手当てはリニューアルを待たずに単体でできます。
やりすぎのライン:本物の見込み客を締め出していないか
ここからが本題です。スパム対策は、やりすぎると問い合わせそのものを減らします。しかも減ったことに気づけません。スパムが止まった達成感の裏で、本物も一緒に消えているからです。
次のような状態になっていたら、行きすぎを疑ってください。
- 入力項目を増やして「面倒だから機械は諦めるだろう」としている
- 電話番号や会社名、住所を必須にして、身元を証明させようとしている
- 画像認証を毎回表示している
- 「同業者の営業はお断りします」といった警告文を、フォームの上に並べている
どれも機械にはまったく効きません。プログラムは面倒を感じないので、項目が増えても平気で全部埋めて送ってきます。効くのは人間に対してだけ、つまり本当に相談したかった人だけが脱落する構造です。
最後の警告文は特に損です。初めて訪れた人が最初に読む文章が、拒絶と警戒になる。検討中の決裁者は、その時点で静かにタブを閉じます。同業者への牽制のために、見込み客を追い払っていることになります。
もし今のフォームが必須項目だらけになっているなら、今のホームページを無料診断するで、入口がどう見えているか一度確認してみてください。
人が送ってくる営業メールは、仕組みで仕分ける
技術で止まらない、手打ちの営業メール。これは弾こうとせず、仕分けの自動化に切り替えるのが現実的です。
問い合わせが届いた時点で内容を判定し、「見積もり・相談」と「売り込み」を分けて別のフォルダに落とす。件名にラベルをつける。担当者には前者だけ通知する。この程度の仕分けは、今のツールなら十分な精度で回ります。判断に迷うものは人間のフォルダに残す設定にしておけば、取りこぼしも防げます。
考え方はAI業務自動化と同じで、判断そのものを渡すのではなく、判断の前段の仕分けだけを渡す。受信箱を開く回数が一日3回に減れば、それだけで本業に戻れます。
まとめ
- スパムの被害は削除の手間ではなく、受信箱を信じられなくなること
- 相手は機械。だから機械にしか見えない罠(ハニーポット、送信速度)から順に打つ
- 入力項目を増やす、画像認証を出す、警告文を貼るのは、人間にしか効かない=逆効果
- 手打ちの営業メールは、弾くのではなく自動で仕分ける
フォームは、会社の玄関です。鍵を増やしすぎた玄関は、泥棒ではなくお客様を追い返します。締めるところと、開けておくところを分けてください。
今のフォームがどちらに寄っているか判断しづらければ、画面を一緒に見ながら整理します。無料で相談するから、お気軽にどうぞ。
