「サーバーの更新案内が届いた」「表示が遅いので乗り換えを検討している」「制作会社との付き合いが変わった」。サーバー移転を考えるきっかけは、たいていこの3つのどれかです。
移転作業そのものは、慣れていれば半日から数日で終わります。やっかいなのは作業ではなく、その前後です。段取りを飛ばすと、サイトは表示されているのに会社のメールだけ届かない、切り替えの当日に来た問い合わせがどこにも残っていない、といったことが起きます。しかもこの手の事故は、起きた瞬間には気づきません。数日経って「そういえば最近問い合わせが来ないな」と気づくころには、失った商談は取り返せません。
引っ越しを安全に終わらせるために、着手前に確かめておくことを順番に書きます。
1. 今の契約が「誰のもの」になっているか
最初に確認するのは、ドメインとサーバーの名義です。自社名義で契約していれば話は早いのですが、制作会社の名義でまとめて管理されている場合、移転の可否そのものが相手の協力次第になります。
確認する項目は3つです。ドメインの登録者名義、サーバー契約の契約者名義、そして管理画面にログインするためのIDとパスワードを自社が持っているかどうか。ひとつでも「たぶん向こうが持っている」という状態なら、移転の計画より先にそこを解決してください。連絡が取れる相手であれば、権限移管は事務手続きで済みます。連絡が取れなくなっている場合は、ドメイン登録事業者への直接申請など別のルートになり、時間がかかります。
この確認は、移転しない会社にとっても価値があります。自社の資産がどこにあるか分からない状態は、それ自体がリスクだからです。
2. メールを一緒に引っ越すのか、切り離すのか
見落としが最も多いのがメールです。「info@会社名.co.jp」のようなアドレスを、サイトと同じサーバーで運用している会社は多くあります。この状態でサーバーを移すと、ドメインの向き先を変えた瞬間にメールの受信先も変わります。
やるべきことは2つ。ひとつは、現在使っているメールアドレスを全部書き出すこと。代表アドレスだけでなく、担当者個人のアドレス、フォームからの通知を受け取っているアドレス、取引先への請求に使っているアドレスまで含めて洗い出します。もうひとつは、過去のメールデータをどうするか決めること。サーバー上にデータを置いたまま使っている場合、移転と同時に消えます。
そもそもサイトとメールを同じサーバーに同居させておく必要はありません。この機会にメールだけ別のサービスへ切り離しておくと、次にサイトを触るときの作業が一段軽くなります。
3. 切り替えのタイミングを、業務のカレンダーで決める
技術的には、ドメインの向き先を新サーバーへ変更した時点が切り替えです。この変更が世界中に行き渡るまで数時間から長くて2日ほどかかり、その間は人によって新旧どちらのサーバーを見ているかがばらつきます。
だからこそ、切り替え日は業務の都合で決めてください。展示会の直前、決算期の請求作業中、キャンペーンの告知中は避ける。問い合わせが少ない曜日の、午前中に始める。この程度の配慮で、リスクの大半は消えます。
切り替え期間中の問い合わせ対策も決めておきます。旧サーバーをすぐ解約せず1〜2週間残しておけば、旧サーバー側に届いたフォーム通知も回収できます。月額数千円で、消えた商談を防げるなら安い保険です。
4. 「戻せる状態」を作ってから手を付ける
移転作業の前に、旧サーバーからサイトのデータとデータベースを両方ダウンロードし、自社のパソコンか社内の共有フォルダに保存してください。制作会社に任せる場合も、控えを自社にも渡してもらいます。
保存したファイルは、ただ置いておくだけでは意味がありません。「いつ・どのサーバーから取得したものか」が分かる名前を付けておきます。こうした社内の資料やデータの整理は、AI業務自動化の取り組みと同じ話で、必要なときに探せない情報は、無いのと同じ扱いになります。
5. 移転後に確認するリストを、先に作っておく
切り替えた直後に何を見るかを、作業前に紙かメモに書き出します。最低限これだけは見てください。
- トップページと主要ページが表示されるか(スマートフォンでも確認する)
- 問い合わせフォームから実際に送信し、通知メールが届くか
- 会社のメールアドレスで送受信できるか
- アドレスバーの鍵マーク(SSL)が有効か
- 管理画面にログインできるか
- 検索エンジンから来たときに、古いページのURLがきちんと表示されるか
フォームのテスト送信は、必ず「本番のフォームから、実際に使っているアドレス宛に」行ってください。ここを省略したために通知が届かなくなっていた、というのは、移転事故として最もよくある形です。
移転をきっかけにサイト自体の作り直しを検討する会社もあります。データを丸ごと移すか、この機会に構造から見直すかは、今のサイトが役割を果たせているかで判断が変わります。判断に迷うなら、ホームページの無料診断で現状を見てから決めても遅くありません。中身から作り直す場合はWeb制作として計画したほうが、結果的に手戻りが減ります。
まとめ
サーバー移転は、技術作業としては地味です。うまくいっても誰も褒めてくれません。けれど失敗すると、会社の連絡手段と営業の窓口が同時に止まります。
だからこそ、事前の確認に時間をかける価値があります。名義とパスワードを押さえ、メールの扱いを決め、業務カレンダーで日を選び、戻せる控えを取り、確認項目を先に書き出す。この5つを済ませてから着手すれば、移転当日はほとんど何も起きない一日になります。何も起きないことが、この仕事の成功です。
サーバーの更新通知を前に手が止まっている、そもそも今の契約がどうなっているか分からない。そんな段階でも構いません。無料相談から、今の状況をそのまま聞かせてください。
