「AIで業務効率化を」と社内で言い出したものの、話が前に進まない。福岡の小さな会社から、この種の相談をよくいただきます。
止まる理由は、たいてい同じです。ツールの比較から始めてしまうからです。どれが優秀かを調べているうちに情報だけが増え、決め手がないまま季節が変わる。これは担当者の能力の問題ではありません。順番が逆なのです。
うまく進んでいる会社は、ツールの前に別のことを決めています。ここでは、その考え方を順番に整理します。
「効率化したい業務」ではなく「毎週腹が立つ業務」を探す
最初にやるべきは、対象の選定です。ここで多くの会社が「重要な業務から」「コストの大きい業務から」と考えますが、私たちはもっと素朴な基準をおすすめします。
毎週やっていて、やるたびに少しイラッとする作業を探してください。
理由は二つあります。ひとつは、頻度が高い作業ほど改善の効果が積み上がること。年に2回の作業をどれだけ速くしても、体感は変わりません。もうひとつは、「面倒だ」という感情が、その作業に無駄が含まれているという現場の判断そのものだからです。転記、コピペ、同じ内容の言い換え、探し物。これらは全部、人がやる意味の薄い仕事です。
小さな会社の強みは、この選定が会議を通さずに決められることです。社長と現場の距離が近いのだから、そこは全力で使うべきです。
最初の1件は、失敗しても誰も困らないものにする
対象が決まったら、次は範囲です。ここでの原則は「小さく、内向きに」。
社外に出る業務、たとえば請求や顧客への返信をいきなり自動化すると、うまくいかなかったときに謝る相手ができます。すると次から慎重になり、社内の空気が「AIは危ない」に傾く。最初の1件は、失敗しても社内で笑って済むものにしてください。議事録の要約、日報の整形、社内マニュアルの検索、問い合わせ内容の分類あたりが定番です。
そして、完璧を目指さないこと。AIの出力を人が5分で直す運用は、立派な効率化です。30分かかっていた作業が5分になっているなら、それはもう成功です。「全自動でないと意味がない」という思い込みが、いちばん多くのプロジェクトを殺しています。
具体的に何から手をつけられるかは、AI業務自動化のページで、実際に手が入りやすい領域を整理しています。
「誰が面倒を見るか」を先に決める
導入して数か月で使われなくなる会社には、共通点があります。持ち主がいないことです。
AIを使った仕組みは、作って終わりではありません。業務が変われば指示の出し方も変える必要があるし、精度が落ちれば調整がいる。この「面倒を見る人」を決めないまま導入すると、誰の担当でもない道具になり、静かに使われなくなります。
大企業のように専任を置く必要はありません。むしろ小さな会社では、その業務をいちばん嫌がっていた人を担当にするのが向いています。改善の動機がはっきりしているからです。役職より、当事者性で決めてください。
地方の会社ほど、浮いた時間の使い道を決めておく
もうひとつ、地方で事業をしている会社に強くおすすめしたいことがあります。効率化に着手する前に、浮いた時間で何をするかを決めておくことです。
時間はつくった瞬間から消えます。使い道を決めていなければ、別の雑務がその席に座るだけで、半年後には「何が変わったんだっけ」となる。せっかく人手を空けるのですから、行き先を先に予約しておくべきです。
福岡のような商圏では、その行き先が「発信」や「顧客との接点」になることが多いと感じます。事務作業に食われていた時間を、既存顧客へのフォローや、自社の考えを伝えるコンテンツ制作に回す。あるいは、問い合わせが取れる状態になっていないホームページの改善に充てる。営業を増やさずに仕事が来る流れをつくるほうが、結局は長くもちます。
まとめ:順番を守れば、規模は不利にならない
整理します。
- 毎週やっていて、面倒だと感じる作業を選ぶ
- 最初は社内向け・小さく始める。人が手直しする前提でよい
- 面倒を見る人を先に決める。その業務を嫌がっていた人が適任
- 浮いた時間の使い道を、着手前に決めておく
ツールを何にするかは、ここまで決まってから考えれば十分間に合います。順番さえ守れば、意思決定が速い小さな組織のほうが、むしろ有利に進みます。
自社のどの業務から手をつけるべきか迷っているなら、業務の棚卸しだけでも一度お話ししませんか。無料の相談で、現状をうかがったうえで現実的な出発点をお伝えします。売り込みはしませんので、気軽にどうぞ。
