「RPAを入れませんか」と言われたことがある。最近は「AIで自動化できます」とも言われる。どちらも業務を楽にする話らしいけれど、何が違うのかは説明されない。──そんな状態のまま、話を保留にしている決裁者の方は多いと思います。
結論から言うと、この2つは競合ではありません。得意な仕事が正反対です。そして、正反対だからこそ、選び間違えると「導入したのに誰も使っていない」という一番もったいない結末になります。
専門用語をできるだけ使わずに、判断に必要なところだけ整理します。
RPAは「手順どおりに手を動かす」仕組み
RPA(Robotic Process Automation)は、人がパソコン上でやっている操作をそのまま記録して、代わりに実行させる仕組みです。
たとえば、こういう作業です。
- 受注メールの内容を、基幹システムの入力画面に打ち込む
- 毎朝、複数のサイトにログインして数字を拾い、Excelにまとめる
- 月末に、勤怠データを給与システム用のフォーマットに変換する
共通しているのは、手順が完全に決まっているという点です。1番目にこの画面を開き、2番目にこの欄をコピーし、3番目にここへ貼る。人間がやると単調で、しかも間違える。RPAはこれを、疲れも飽きもせずに繰り返します。
裏を返すと、RPAは決められた手順から外れた瞬間に止まります。画面のボタンの位置が変わった、メールの書式がいつもと違った、想定外の項目が空欄だった。人なら「まあ、こういうことだろう」と処理できる揺らぎが、RPAには処理できません。だから運用には、止まったときに直せる人が必要になります。
AI業務自動化は「その都度、判断する」仕組み
一方、AIによる自動化が得意なのは、手順が決めきれない仕事です。中身が毎回違い、読んで意味を汲み取らないと次の動作が決まらない類の作業ですね。
- 問い合わせメールを読んで、内容の種類を仕分けし、返信の下書きまで作る
- 打ち合わせの録音から議事録を起こし、決定事項とタスクを抜き出す
- バラバラの書式で届く請求書から、必要な項目だけを読み取る
- 過去の社内資料を横断して、質問への答えとなる箇所を探し出す
これらはRPAには荷が重い領域です。「問い合わせメールの3行目をコピーする」という手順が成立しないからです。文面は毎回違い、どこに何が書いてあるかも決まっていない。意味を理解する必要があります。
AIの弱点も裏返しで、必ず正解する保証がないことです。ほとんど合っているけれど、たまに外す。だから、間違えたときの被害が大きい工程――たとえば振込の実行や、社外への最終送信――は人が確認する形に設計します。この線引きについてはAI業務自動化のページでも触れていますが、要は「任せる範囲を決める設計」が導入の本体です。
見分け方は「マニュアルが書けるかどうか」
現場の作業をどちらに振り分けるか。判断はシンプルで、その作業の手順書を、抜けなく書き切れるかを考えてみてください。
新人に渡して、その通りやれば必ず終わる手順書が書けるなら、RPAの領域です。手順書に「あとは状況を見て判断」「内容によって適宜」と書きたくなるなら、そこがAIの領域です。
現実の業務は、この2つが1本の流れの中に混ざっています。たとえば請求書処理なら、「届いた書類から金額と取引先を読み取る」のはAI、「読み取った値を会計ソフトに登録する」のはRPAや既存ツールの連携機能、という具合です。片方だけで全部やろうとすると無理が出ます。
小さな会社は、どちらから手をつけるべきか
従業員数十名規模の会社で、いきなりRPAの全社導入から入るのは、おすすめしにくいのが正直なところです。ライセンス費用に加えて、シナリオを作る人と、止まったときに直す人が要ります。作業量がまとまっていないと、維持コストのほうが上回ります。
対して、AI側の自動化は小さく始められます。ひとつの業務、ひとりの担当者の作業から試して、効果が見えたら広げる。この進め方が取りやすいのが実務上の大きな違いです。
最初に手をつける対象の選び方は、次の3つで絞れます。
- 毎週必ず発生する ── 頻度が低い作業を自動化しても、体感が変わりません
- 担当が特定の一人に偏っている ── その人が休むと止まる業務は、投資判断が通りやすい
- 間違えても取り返しがつく ── 下書き段階、社内向け、確認工程がある作業から始める
この3つを満たす作業は、たいていどの会社にもあります。議事録、日報、問い合わせの一次仕分け、社内資料の検索あたりですね。発信を続けたい会社なら、記事やSNS投稿の下書きづくりも同じ枠に入ります(このあたりはコンテンツ制作の話とも重なります)。
なお、「うちにその作業があるのか分からない」という状態から始めても構いません。むしろ普通です。棚卸しの段階で、自動化以前に「そもそもこの作業要りますか」という話に着地することもよくあります。それはそれで成果です。
まとめ
- RPA=手順が決まった操作を、そのまま代行する。定型・大量に強く、例外に弱い
- AI業務自動化=内容を読んで判断する作業を任せる。非定型に強く、100%の精度は前提にしない
- 見分け方は「抜けのない手順書が書けるか」
- 実際の業務は両者の組み合わせ。小さな会社は、AI側の小さな一業務から始めるのが現実的
どちらが優れているという話ではなく、当てる場所を間違えなければ、どちらも効きます。逆に言えば、ツールを先に決めてから業務を探す進め方は、ほぼうまくいきません。先にあるのは、自社のどの作業が重いのかという話です。
自社の業務がどちらに当てはまるのか、いきなり判断するのは難しいと思います。「この作業、任せられますか」という粒度で構いませんので、無料で相談するからお気軽にどうぞ。一緒に棚卸しするところからお手伝いします。
