「うちは下請けだから、ホームページは名刺代わりでいい」。そう考えて、社名と住所と電話番号だけのサイトを十年近く置いたままの会社は少なくありません。実際、元請けからの仕事が安定して入ってくる間は、それで困らないのも事実です。
困るのは、流れが変わったときです。元請けの発注が減る、単価の交渉が厳しくなる、担当者が代わって関係がリセットされる。そのときに「直接取引を増やしたい」と思っても、新しい相手はこちらを知りません。そして知らない相手が最初にすることは、ほぼ例外なくホームページを見ることです。
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。直接取引の最初の接点は、こちらの営業ではなく、相手の調査です。発注側の購買担当者や設計担当者は、候補になりそうな会社を検索し、サイトを開き、数分で「問い合わせる価値があるか」を判断しています。この数分で何を確かめているのかが分かれば、見せるべきものは自然に決まります。
発注側は「頼めるかどうか」を先に確かめている
発注側の担当者が新しい取引先を探すとき、頭の中にあるのは「この会社はうちの仕事を受けられるか」という問いです。良い会社かどうかではなく、頼めるかどうか。この順番を間違えると、サイトは「自社のこだわり」の紹介で埋まり、肝心の情報が抜け落ちます。
担当者が最初に確かめるのは、だいたい次の項目です。
- 何ができるのか。 扱える加工・工程・材質・サイズ・ロットの範囲。一点ものか量産か。
- どこまで受けられるのか。 図面からの製作か、仕様書だけでも相談できるのか、設計から入れるのか。
- どこにあるのか。 所在地と、納品や打ち合わせで現実的に動ける範囲。
- どんな体制か。 人数、主要設備、資格や許認可、取得している認証。
- 誰が見ているのか。 品質をどう担保し、不具合が出たときにどう対応するか。
- 急ぎに対応できるのか。 標準的な納期と、短納期の相談ができるか。
これらは、電話で聞けば答えられる内容ばかりです。しかし担当者は、答えられる会社に電話をしているのではありません。サイトに書いてある会社から順に電話をしているのです。書いていない会社は、候補から静かに外れます。断られたわけでも、比較で負けたわけでもなく、比較の土俵に乗らなかっただけです。
まずは、この項目を一つずつ自社に当てはめて、サイトのどこに書いてあるかを確認してみてください。半分以上が「どこにも書いていない」なら、それが直接取引が増えない理由の一つです。
「できること」は、できないことまで書くと信用される
技術や設備のページで多いのが、「〇〇加工から△△まで幅広く対応」という書き方です。間違いではないのですが、発注側からすると判断材料になりません。幅広いと言われても、自分の案件が入るのかどうかが分からないからです。
効くのは、具体的な範囲と、その外側を書くことです。
たとえば、対応できる材質と板厚の範囲、最大寸法、1ロットの目安、量産には向かないなら「試作・小ロット中心」と明記する。「大型のものは協力会社と連携」と書いてもかまいません。できないことを書くのは不利に見えますが、実際は逆で、範囲がはっきりしている会社ほど問い合わせやすいのです。担当者は「違っていたらどうしよう」という不安を持ちながら電話をかけています。その不安を先に消してあげるだけで、問い合わせの心理的な壁はかなり下がります。
もう一つ、設備一覧は型番や台数まで載せる価値があります。技術者が見れば、設備名だけで何ができるかはおおよそ分かります。「最新設備を完備」という一文より、機械の名前が並んでいるほうが、はるかに多くの情報を伝えます。加えて、写真を一枚添えると、工場の清掃状態や整理の仕方まで伝わります。品質管理の説明を長々と書くより、整った現場の写真一枚のほうが雄弁なことは珍しくありません。
このあたりの「何を書くか」の整理は、サイト全体の設計と切り離せません。ページの構成から考え直す場合は、Web制作の進め方としてもまとめています。
取引先名を出せなくても、実績は書ける
下請けの会社が実績ページで止まる理由は、ほぼ一つです。取引先の名前を出せない。守秘義務があるのは当然で、そこを破る必要はまったくありません。
ただ、実績として伝えたいのは社名ではなく、「どんな仕事を、どの程度の難しさでこなしてきたか」です。それは社名を伏せたまま書けます。
- 業種で書く。「自動車部品メーカー向け」「食品工場の設備向け」のように、相手の業界だけを示す。
- 工程と条件で書く。扱った材質、精度、数量、納期の条件。
- 課題と対応で書く。「図面の段階で加工しづらい形状だったため、設計担当と相談して形状を見直した」といった、仕事の進め方が分かる一文。
- 継続の事実で書く。「〇年以上継続して受注している取引先が複数ある」という表現は、社名なしで信頼を伝えます。
発注側の担当者が実績を見るのは、有名企業と取引しているかを確かめるためではありません。自分の案件と似た仕事をした経験があるかを探しているのです。だから社名より、仕事の中身のほうが価値があります。
写真も同じ考え方で使えます。製品そのものが出せなければ、加工中の工程や治具、検査の場面でも十分です。現場の写真や短い動画は、文章では伝わりにくい「仕事の丁寧さ」をそのまま運んでくれます。撮り方や続け方はコンテンツ制作の範囲ですが、スマートフォンで撮った一枚からでも始められます。
問い合わせの窓口は、図面を送れる形にしておく
ここまで整えても、最後の窓口が電話番号だけでは惜しい話になります。発注側の担当者は、日中は会議や現場に出ていることが多く、電話よりもまず資料を送って反応を見たいと考えています。
窓口で押さえるべきことは三つです。
ファイルを添付できること。 図面や仕様書を送れないフォームは、製造や加工の問い合わせでは使いづらい。添付欄を一つ付けるだけで、やり取りの往復が一回減ります。
誰がいつ返事をするかを書いておくこと。 「営業日2日以内に担当者からご連絡します」のような一文で、相手は安心して待てます。返信が早いこと自体が、取引先としての評価になります。
概算でも相談できると明示すること。 「図面がまだ固まっていない段階でもご相談ください」と書いてあるだけで、設計段階の相談が入りやすくなります。早い段階で関われる案件は、価格だけで比べられにくく、長い取引になりやすいものです。
このあたりは、自社サイトの現状を見てみないと優先順位がつけにくい部分でもあります。今のサイトに何が足りないかを確認したい場合は、ホームページの無料診断で現状を整理するところから始められます。
まとめ
直接取引の入口は、こちらが売り込む場面ではなく、相手が調べている場面にあります。だからホームページは、営業トークの場ではなく、発注側の確認作業を代わりに済ませる場所として作ると機能します。
- 発注側が確かめる項目(できること・範囲・所在地・体制・品質・納期)を、サイトのどこかに必ず書く
- 対応範囲は具体的に、できないことまで書く。設備は名前と台数まで
- 取引先名を出さずに、業種・工程・課題と対応で実績を書く
- 窓口は図面を添付でき、返信の目安と概算相談の可否を明記する
どれも派手な施策ではありません。しかし、これらが書いてあるだけで、候補に残る確率はまったく変わります。営業に出なくても問い合わせが来る状態は、サイトに情報が揃った会社から順に実現していきます。
自社のサイトに何が足りないか、まずは一緒に確認するところから始めませんか。売り込むつもりはありませんので、無料相談から気軽に声をかけてください。
