AIを入れたほうがいいのは分かっている。けれど、誰に聞けばいいのかが分からない。福岡のような地方都市の小さな会社では、ここで手が止まりがちです。
東京のイベントで聞く話は規模が大きすぎる。付き合いのあるOA機器の会社に聞くと、製品のパンフレットが出てくる。ネットで調べると、聞いたことのないツール名ばかりが増えていく。
問題はAIの難しさではありません。相談先の種類と、それぞれの得意分野が整理されていないことです。この記事では、相談先の選び方と、相談する前に社内で決めておくことを順番にまとめます。
相談先は5種類ある。得意な場面がそれぞれ違う
「AIの相談先」とひとくくりにされがちですが、中身はまったく別物です。
1. まず自社だけで試す
意外かもしれませんが、最初の選択肢は「誰にも相談しない」です。文章の下書き、議事録の要約、メールの言い換え。この程度なら、汎用のAIチャットを月額数千円で契約して、社長か担当者が2週間さわれば感触がつかめます。外部に頼むのは、その後で遅くありません。
2. 公的な相談窓口・支援機関
商工会議所や、自治体・国が設けている中小企業向けの相談窓口です。費用がかからないことが多く、補助金の情報も得やすい。一方で、自社の業務に合わせた仕組みを作るところまでは担当しません。方向性を整理する場として使うのが現実的です。
3. ITベンダー・システム会社
基幹システムや販売管理など、すでに動いている仕組みとつなぐ必要があるなら、ここが本命です。ただし得意なのは自社が扱う製品の範囲内。小さな業務改善には、提案の規模が大きすぎることがあります。
4. Web制作会社・小規模な開発会社
問い合わせ対応、見積もり作成、社内資料の検索など、日々の業務に近いところを小さく作るのが得意です。会社ごとに力量の差が大きいので、後述の見極めが欠かせません。
5. 個人・フリーランス
動きが速く、費用も抑えやすい。その代わり、その人が動けなくなったときに仕組みごと止まる危険があります。頼むなら、設定内容と手順を文書で残してもらうことを条件にしてください。
どれが正解という話ではありません。今の自社がどの段階にいるかで決まります。まだ何もさわっていないなら1、方向性が見えないなら2、既存システムとつなぐなら3、特定の業務を軽くしたいなら4か5です。
相談先を見極める5つの質問
相談先の候補が決まったら、最初の打ち合わせで次の5つを確かめてください。答えの中身より、答え方に相手の姿勢が出ます。
「うちの業務の、どこから聞きますか」
こちらの業務の流れを聞く前にツール名や製品名が出てくるなら、売りたいものが先に決まっています。良い相談先は、最初の1時間をほとんど質問に使います。
「一番小さく始めるなら、どこまで絞れますか」
全社導入の計画しか出てこない相手は避けたほうが無難です。業務1つ、担当者1人、1か月。この単位まで絞る提案ができるかを見ます。
「途中でやめたら、何が残りますか」
解約したら何も残らない仕組みなのか、設定や手順書が手元に残るのか。契約期間の縛りと合わせて、最初に聞いておきます。
「入力した情報は、どこに保存され、何に使われますか」
顧客名や取引金額を扱う以上、ここを曖昧にする相手には任せられません。即答できない場合でも、「確認して書面で返します」と言えるかどうかで判断できます。
「月額費用の中身を、項目で教えてください」
ツールの利用料なのか、保守なのか、相談対応なのか。内訳を言葉にできない月額は、後から削ることも見直すこともできません。
5つのうち2つ以上で話が噛み合わないなら、別の相談先を当たる。それで十分です。相見積もりを何社も取るより、この質問を2社に投げるほうがずっと早く結論が出ます。
相談の前に、社内で決めておく5つのこと
相談先が優秀でも、こちらが何も決めていなければ打ち合わせは雑談で終わります。逆に、次の5つがA4一枚にまとまっていれば、初回から具体的な話に入れます。
1. 対象の業務を1つだけ選ぶ
「全体的に効率化したい」では、誰も提案を組めません。毎週繰り返していて、やるたびにうんざりする作業を1つ。見積もりの下書きでも、問い合わせメールの一次返信でも構いません。
2. 「何が減れば成功か」を先に決める
時間なのか、ミスなのか、特定の人への依存なのか。ここが決まっていないと、導入後に「便利になった気はする」で終わり、続けるかやめるかの判断ができなくなります。「週に3時間かかっている作業が1時間になれば成功」くらいの粗さで十分です。
3. 社内の担当を1人決める
詳しい人である必要はありません。必要なのは、試す時間を確保できることと、社長に直接報告できること。兼務で構いませんが、名前は決めてください。担当のいない仕組みは、3か月で誰も開かなくなります。
4. AIに入れてよい情報の線を引く
顧客の個人情報、取引先との契約内容、従業員の評価。これらを入れてよいのか、入れるならどの環境に限るのか。細かな規程は後回しで構いませんが、「入れてはいけないもの」だけは先に書き出しておきます。
5. 試す期間と、やめる条件を決める
期限のない試行は、成功も失敗もしないまま続きます。「1か月試して、担当者が毎週使っていなければやめる」。この一文があるだけで、始めるハードルも、撤退のハードルも下がります。
地方の小さな会社が、あえて近くで探す意味
オンラインで全国どこの会社にも頼める時代です。それでも、最初の1件は通える距離の相手を選ぶ利点があります。
業務の自動化は、画面越しの説明だけでは伝わらない部分が多いからです。紙の伝票がどこに積まれているか、電話を誰が取っているか、どの棚のファイルを何度も開いているか。現場を一度見てもらうだけで、説明に使う時間が大きく減ります。
もちろん、近いというだけで選ぶ必要はありません。先ほどの5つの質問に噛み合う答えが返ってくること。そのうえで現場を見に来られる距離なら、話は早く進みます。AI業務自動化のように、日々の作業を対象にする取り組みほど、この差は効いてきます。
なお、問い合わせ対応や見積もり依頼の受付を軽くしたい場合は、AIの前にホームページ側のフォームや導線を整えるほうが効くこともあります。入口が散らかったままAIをつないでも、散らかった情報が速く届くだけです。
まとめ
AI導入の最初の一歩は、ツール選びではなく段取りです。
- 相談先は5種類。自社がどの段階にいるかで選ぶ
- 最初の打ち合わせで5つの質問を投げ、答え方を見る
- 相談の前に、業務・成功の基準・担当・情報の線引き・期限をA4一枚にまとめる
- 最初の1件は、現場を見に来られる相手だと話が早い
ここまで決まっていれば、どの相談先に行っても、聞くべきことを聞いて帰ってこられます。
A4一枚がうまく埋まらないときは、その整理から一緒に進めることもできます。無料の相談では現状をうかがうだけで、売り込みや営業の電話はしませんので、気軽に声をかけてください。
