ホームページの文章を読み返して、「これ、うちじゃなくても成り立つな」と感じたことはないでしょうか。「地域に密着」「丁寧な対応」「確かな技術」。どれも嘘ではありません。ただ、同じ業種の会社のサイトを3つ開けば、ほぼ同じ言葉が並んでいます。読む側からすると、どこに頼んでも同じに見える。これでは文章を載せている意味がありません。
こうなる原因ははっきりしています。文章を「書こう」として、机の上で言葉を探しているからです。社長自身が書いても、制作会社のライターが書いても、白紙から始めると無難な言葉に寄っていきます。
会社らしい言葉の材料は、すでに社長の頭の中にあります。お客さんに説明するとき、社員に指示を出すとき、同業者に愚痴をこぼすとき。そこで出てくる言葉のほうが、よほどその会社を表しています。必要なのは、それを外に出して、読める形に整える手順です。今回はその手順を、インタビューを軸に4つの段階で紹介します。
1. 準備:何を書くページかを先に決める
インタビューをいきなり始めると、話は盛り上がっても使える材料が残りません。先に決めておくのは2つです。
ひとつは、どのページの文章を作るのか。トップページの一文なのか、サービスページの説明なのか、会社概要の「代表あいさつ」なのか。ページによって必要な話がまったく違います。トップなら「誰の、どんな困りごとを解決する会社か」、サービスページなら「頼むと何が起きて、何が変わるか」、代表あいさつなら「なぜこの仕事をしているか」です。
もうひとつは、そのページを読むのは誰か。新規の見込み客なのか、既存の取引先なのか、求職者なのか。読み手が決まっていないと、社長の話のどこを拾うべきか判断できません。
この2つを紙1枚に書いておくだけで、インタビュー中に「その話、今回は使わないな」と気づけるようになります。
2. 質問:「強みは何ですか」とは聞かない
インタビューでいちばん使えない質問が「御社の強みは何ですか」です。こう聞かれると、ほぼ全員が「丁寧さ」「スピード」「技術力」と答えます。準備してきた答え、つまりクリシェが出てくるだけです。
代わりに、具体的な場面を聞きます。たとえばこういう質問です。
- 最近、お客さんに「頼んでよかった」と言われたのはどんなときでしたか
- 断った仕事、断られた仕事はありますか。それはなぜですか
- 同業者のやり方で「うちならそうはしない」と思うことはありますか
- お客さんが最初に相談に来るとき、どんな言葉で困りごとを話しますか
- 社員に何度も言っていることは何ですか
ポイントは、評価ではなく出来事を聞くことです。出来事の話には、その会社にしかない判断が含まれます。「急ぎの案件でも、図面が固まるまでは着工しない」「見積もりの段階で、やらなくていい工事を削る」。こうした判断こそが、読み手にとっての「この会社に頼む理由」になります。
もうひとつ大事なのが、話が抽象的になったら「たとえば?」と一段下げることです。「お客さんとの距離が近い」と出てきたら、「たとえばどういうときに、そう感じますか」と聞く。これを2回繰り返すと、たいてい具体的な場面にたどり着きます。
時間は60〜90分が目安です。短いと表面的な話で終わり、長いと話が散ります。そして必ず録音してください。メモを取りながらでは、聞き手が話に集中できません。
3. 書き起こし:言い回しを残して、順番だけ組み替える
録音を文字にしたら、そこから文章を起こします。ここで多くの人がやってしまうのが、社長の言葉を「きれいな文章」に書き換えることです。整えすぎた瞬間に、また無難な言葉に戻ってしまいます。
書き起こしの作業は、次の順で進めると迷いません。
- 使える発言に印をつける。 具体的な場面、数字、判断の理由、口癖。これらが材料です。
- ページの目的ごとに並べ替える。 準備で決めたページ構成に沿って、発言を振り分けます。
- つなぎの言葉だけを足す。 話し言葉の重複や言い淀みを削り、文と文の接続を整えます。
- 特徴的な言い回しはそのまま残す。 「現場を見ないと値段は言えない」のような言葉は、多少ぶっきらぼうでも残したほうが伝わります。
直すのは順番と接続であって、言葉の中身ではありません。社長が普段使わない言葉が文章に入っていたら、それは書き手の言葉が混ざったサインです。
この工程は、文字起こしや発言の仕分けをAIに手伝わせると一気に速くなります。録音から文字を起こし、「具体的な場面を話している箇所を抜き出して」と頼めば、材料集めの時間は大きく減ります。ただし、最後の言葉選びは人がやるべきです。AIに整えさせると、せっかくの言い回しが平均的な表現に置き換わってしまうからです。
4. 確認:社長に読んでもらい、「言いそうか」で判断する
できあがった文章は、必ず社長本人に読んでもらいます。このとき確認してほしいのは「うまく書けているか」ではなく、「自分がお客さんに言いそうな言葉か」です。
「こんな言い方はしない」という箇所があれば、そこは直します。逆に「ちょっと恥ずかしいけど、確かにいつも言っている」という箇所は、たいてい一番効いている部分です。照れて削りたくなる言葉ほど、読み手には個性として届きます。
もうひとつ、社員に読んでもらうのも有効です。「うちの社長っぽい」と言われれば、その文章は会社の言葉になっています。
まとめ
会社らしい文章は、上手な書き手が生み出すものではなく、社長の話から掘り出すものです。
- 先に「どのページを、誰に向けて書くか」を決める
- 強みを聞かず、具体的な出来事と判断を聞く
- 言い回しを残し、順番と接続だけを整える
- 「本人が言いそうか」で最終確認する
この手順を踏むと、同業他社と並べたときに「この会社は話が通じそうだ」と感じてもらえる文章になります。サイトを作り直すときは、デザインの前にまずこの材料集めから始めてみてください。私たちもWeb制作やコンテンツ制作のご依頼では、最初にこのインタビューの時間をいただいています。
「自分の話がどう文章になるのか試してみたい」という段階でも構いません。まずは無料相談で、今のサイトの言葉について一緒に眺めるところから始めましょう。
