名刺のロゴは濃い緑なのに、ホームページでは明るい緑。チラシは担当者ごとにフォントが違い、社用車のステッカーだけ古いロゴのまま。並べてみると「同じ会社のものとは思えない」状態になっている会社は、珍しくありません。
一つひとつは小さな違いです。それでも、初めてあなたの会社を見る人には「細かいところに気が回らない会社かもしれない」という印象を残します。そして社内では、新しい販促物を作るたびに「ロゴのデータどこだっけ」「この色で合ってる?」というやり取りが毎回発生します。これは純粋な時間の無駄です。
大企業のような何十ページものブランドガイドラインは要りません。小さな会社に必要なのは、A4一枚に収まるブランドルールです。この記事では、その1枚に何を載せ、どう決めて、どう社内に行き渡らせるかを順番に説明します。
バラバラになるのは、センスではなく「決まっていない」から
見た目がそろわない原因を、担当者のセンスのせいにするのは筋違いです。ほとんどの場合、理由はもっと単純で、正解が決まっていないか、決まっているけれど誰も見られる場所にないかのどちらかです。
よくある経緯はこうです。
- 創業時にロゴを作ってもらったが、受け取ったのは画像1枚だけ
- 色の指定(数値)をもらっていないので、印刷会社やWeb担当がそれぞれ「見た目で近い色」を選んだ
- 担当者が変わるたびに、手元のパソコンにあるフォントで資料を作った
- 古いデータと新しいデータが混ざったまま、共有フォルダに残っている
つまり、毎回その場の判断に任されているのです。判断の回数が多ければ、結果がばらつくのは当然です。逆に言えば、判断しなくていい状態を作れば、誰が作っても同じ見た目に近づきます。
1枚に載せるのはこの6項目だけ
ブランドルールの1枚に入れる項目は、次の6つで足ります。これ以上増やすと、読まれなくなります。
1. ロゴの正式版と使い分け
横組み・縦組み・アイコンだけ、など使うパターンを並べ、それぞれ「どこで使うか」を一言添えます。白い背景用と、濃い背景用(白抜き)の2種類も必要です。
2. ロゴの「やってはいけない」
変形させない、色を勝手に変えない、写真の上に読みにくい状態で置かない。悪い例を小さく3つほど並べるだけで、ミスはかなり減ります。周囲にどれくらい余白を空けるかも、ここで決めておきます。
3. 色は数値で指定する
メインカラー1色、サブカラー1〜2色、文字色と背景色。それぞれについて、印刷用(CMYK)とWeb用(HEXやRGB)の数値を書きます。「緑」ではなく数値で書くことが、この1枚でいちばん効く部分です。
4. フォントは2種類まで
見出し用と本文用の2つで十分です。パソコンに入っていない場合の代わりのフォントも書いておくと、「ないから適当に選んだ」が起きません。
5. 写真のトーン
明るめか落ち着いた雰囲気か、人物を入れるか、加工はどこまでか。言葉で1〜2行と、見本写真を2〜3枚。写真は見た目の印象を大きく左右するので、短くても入れておく価値があります。
6. 言葉づかいの基本
社名の正式表記(全角・半角、英字表記の有無)、「です・ます」で統一するか、自社を「弊社」と書くか「私たち」と書くか。見た目のルールに見えないかもしれませんが、販促物の印象を揃えるにはここも外せません。
決め方:新しく作るより、今あるものから選ぶ
ルールを作ろうとすると、「この機会にロゴも色も全部見直したい」と考えがちです。気持ちはわかりますが、最初の1枚の目的は今あるバラつきを止めることです。作り直しは、その後に必要なら考えれば十分です。
進め方は次の通りです。
- 今使っている販促物を全部机に並べる。 名刺、封筒、チラシ、ホームページの画面、看板の写真、SNSのアイコン。並べると、どれがズレているか一目で分かります。
- 「いちばん気に入っているもの」を基準に決める。 その色やロゴの形を正解として採用します。迷ったら、目にする人がいちばん多いもの(多くの場合はホームページか名刺)に合わせます。
- 元データを探し出す。 ロゴを作った制作会社やデザイナーに、拡大しても粗くならない形式のデータ(ベクター形式)と色の数値を問い合わせます。ここが手に入るかどうかで、後の手間が大きく変わります。
- 1枚にまとめて、決裁者が承認する。 「社長がOKを出した」という事実が、社内でルールを守る理由になります。
作業そのものは、データさえそろえば数日で終わる規模です。何年も続いていたバラつきが、数日の作業で止まるなら、かなり割のいい投資だと思いませんか。
もしロゴや配色そのものに違和感があって、見直しから相談したい場合は、コンテンツ制作の範囲で整理のお手伝いもしています。
作った後がいちばん大事:「探さなくていい場所」に置く
ルールを作っても、誰も開かなければ意味がありません。よくある失敗は、立派なPDFを作って共有フォルダの奥にしまい込むことです。
効くのは、次の3つです。
- ルールの1枚と、ロゴ・素材データを同じフォルダに入れる。 フォルダ名は「ブランド素材(最新)」のように、迷わない名前にします。古いデータは別フォルダに移すか削除して、最新版しか目に入らない状態にします。
- 外注先に最初に渡す。 印刷会社、デザイナー、Web制作会社に依頼するとき、この1枚とデータをセットで送ります。毎回の説明が不要になり、修正のやり取りも減ります。
- 新しく入った人に最初に見せる。 入社時に5分説明するだけで、「知らなかった」によるズレがなくなります。
ホームページも、このルールが最も効く場所の一つです。サイトはページ数が多く、更新のたびに色やフォントが少しずつズレていきやすいからです。ルールに合わせてサイト全体を整えたい場合は、Web制作のページで進め方を紹介しています。
1枚あると、AIや外注への指示も短くなる
もう一つ、見落とされがちな効果があります。ブランドルールが1枚にまとまっていると、人にもAIにも指示が短く済むようになることです。
たとえば、生成AIにチラシの文案やSNS投稿の下書きを頼むとき、「言葉づかいの基本」の項目をそのまま渡せば、毎回トーンを説明し直す必要がありません。デザインツールにメインカラーの数値を登録しておけば、誰が作っても同じ色が出ます。
逆に、ルールがないままAIや外注を使うと、作れば作るほどバラつきが増えていきます。道具が便利になるほど、「正解を1か所に決めておくこと」の価値は上がります。こうした社内の仕組みづくりとAIの使い方は、AI業務自動化のページでも詳しく紹介しています。
まとめ
- 見た目のバラつきは、センスではなく「正解が決まっていない」ことが原因
- 1枚に載せるのは、ロゴ・禁止例・色の数値・フォント・写真のトーン・言葉づかいの6項目
- 新しく作るより、今あるものから「いちばん良いもの」を選んで基準にする
- 作った後は、素材データと一緒に「探さなくていい場所」に置き、外注先と新人に最初に渡す
分厚いマニュアルは要りません。1枚あるだけで、販促物を作るたびの迷いと確認のやり取りが消え、どこで見ても「同じ会社だ」と分かる状態に近づきます。
自社の場合、どこから手をつければいいか迷ったら、無料相談で今の販促物を一緒に眺めるところから始めてみませんか。
