コンテンツ制作を外注したものの、半年後には更新が止まっている。記事も動画も一定量は納品されたのに、社内の誰も「あれで何が変わったか」を説明できない。よくある話です。
原因を制作会社に求めたくなりますが、たいていは違います。発注する前に社内で決めておくべきことが決まっていないまま、制作だけを外に出してしまったことが原因です。これは相手を変えても繰り返します。
外注そのものは合理的な判断です。撮影も編集も記事執筆も、片手間でやると質が落ちるうえに時間ばかり食う。外に出したほうが早いのは間違いありません。ただし、外に出せるのは「作る作業」だけで、「何を作るか決めること」は外に出せない。ここを分けずに丸ごと預けると、成果の見えない納品物が積み上がります。
この記事では、発注前に社内で決めておきたい3つのことを、決め方まで含めて整理します。
1. 「誰の、どの迷いを消すためのコンテンツか」を決める
最初に決めるのは目的です。ただし「認知度を上げたい」「ブランディングしたい」では決めたことになりません。この粒度だと、何を作っても正解に見えて、何を作っても効果が測れないからです。
もう一段おろして、誰が、どの場面で、何に迷っているかまで書ける状態にしてください。
- 見積もりを出した後、社内で稟議を通す担当者が「本当にこの会社で大丈夫か」で止まっている
- 求人に応募しようか迷っている人が「入社後にどんな一日を過ごすのか」が想像できずにいる
- 問い合わせ前の人が「うちの規模でも頼めるのか」が判断できずにいる
ここまで具体化すると、作るべきものは自動的に決まります。稟議で止まっているなら、導入事例の形をした記事か、社内で回覧できる資料。一日が想像できないなら、社員の働く様子を映した短い動画。規模感が分からないなら、料金の考え方を説明したページ。
逆に言えば、この一文が書けないまま「まず月4本」と本数だけ決めて発注するのが、いちばん危ない進め方です。本数は目的が決まった後に出てくる結論であって、最初に決めるものではありません。
決め方はシンプルです。直近半年で失注した案件と、採用で辞退された人を思い出してください。そのとき相手が何を確認しきれずに離れていったか。そこにコンテンツで埋められる穴があります。営業の現場で毎回同じ説明を繰り返しているなら、それはもうコンテンツにすべき内容です。
なお、コンテンツの置き場所がホームページなら、サイト側の構成と切り離して考えないでください。よく書けた記事でも、たどり着けない場所に置いてあれば読まれません。作る前に「これはサイトのどこに置くか」まで決めておくと、無駄になりません。
2. 判断する人を、ひとりに決める
2つめは体制の話です。外注がうまくいかない現場を見ていると、制作物の質より先に承認プロセスで壊れていることのほうが多い。
構成案を出す。社長が見る。営業部長も見る。現場の担当者も一言添える。それぞれもっともな意見なので、制作会社はすべてを取り込もうとする。結果、誰に向けたものか分からない当たり障りのないものが出来上がり、修正が3往復して納期が1ヶ月延びる。
これを防ぐ方法はひとつです。最終判断をする人をひとりに決め、その人が決めたら他の意見は参考扱いにする。合議で決めないと不安なら、意見を集める工程を「初回の企画時だけ」と決めて、制作が始まったら判断者ひとりに絞ってください。
判断者に必要なのは、デザインや文章の良し悪しを見る目ではありません。1で決めた目的に照らして「これは効くか」を答えられることです。だから、判断者は目的を決めた人と同じであるべきです。
もうひとつ、外注先に渡しておくと効くものがあります。やってはいけないことのリストです。
- 使ってほしくない言い回し(「業界No.1」など、根拠が示せない表現)
- 出せない情報(取引先名、金額、社内の写真で映してはいけない場所)
- ロゴや色の扱い
こちらは「良いものを作ってください」より圧倒的に伝わります。良し悪しの基準を言語化するのは難しいですが、地雷の場所を教えるのは簡単です。初回にこれを渡しておくだけで、手戻りが目に見えて減ります。
3. 納品された後、誰がどう使うかを決める
3つめが、いちばん抜けやすいところです。
コンテンツは納品された時点では何の成果も出していません。記事が公開されて読まれ、動画が営業の場で再生されて、はじめて仕事をします。ところが多くの場合、発注時の合意は「納品まで」で終わっていて、その後の運用が誰の担当かも決まっていない。だから納品物はサーバーの中で眠ります。
発注前に、次の3つを決めておいてください。
公開・配信の担当者
サイトへの掲載、SNSへの投稿、メールでの配信。誰がやるのか。社内に手が空いていないなら、そこも含めて外注範囲に入れるべきです。「作るだけ」で契約して、公開作業が社内の誰かの善意に頼っている状態は、ほぼ確実に止まります。
営業や採用の現場に渡す方法
せっかく作った動画を営業担当が知らない、というのは実際によく起きます。納品されたら誰にどう共有するか、商談のどの場面で使うか。ここまで決めて、初めて現場で使われます。
次の1本をいつ決めるか
単発で終わるか継続するかは、この一点で決まります。「3ヶ月後に振り返りをして次を決める」と最初にカレンダーに入れておく。決まっていないと、忙しさに押されてそのまま終わります。
そして継続を前提にするなら、コンテンツ制作の体制自体を、無理のない量で設計し直したほうがいい。月4本を3ヶ月で止めるより、月1本を2年続けるほうが確実に効きます。素材の整理や公開作業といった繰り返しの手作業が負担なら、その部分を自動化することも検討する価値があります。人がやるべきは、何を伝えるかを決めるところです。
見積もりを取る前に、この3つを1枚にまとめる
ここまでの3つは、A4で1枚にまとまります。
- 誰の、どの迷いを消すためか(1〜2文)
- 判断者は誰か。やってはいけないことは何か
- 納品後、誰がどう使うか。次はいつ決めるか
これを持って相談に行くと、話の進み方がまったく変わります。制作会社側も、この情報があれば提案の精度が上がります。逆にこれがないと、相手は無難な標準プランを出すしかありません。標準プランが悪いのではなく、あなたの会社に合っているかどうかを誰も判断できない状態になるのが問題です。
そして、この1枚を作る過程そのものに価値があります。書こうとすると「うちは結局、何で選ばれているんだっけ」という問いに突き当たるからです。ここを言葉にできている会社は、外注してもしなくても、発信が強くなります。
まとめ
コンテンツ制作の外注で失敗する原因は、制作会社選びより手前にあります。目的が抽象的なまま、判断者が決まらないまま、納品後の使い道が決まらないまま発注してしまう。この3つが揃うと、どんなに腕のいい会社に頼んでも成果は見えません。
逆に、この3つさえ決まっていれば、外注は非常に効率のいい選択です。作る作業は外に出し、決める仕事だけ社内に残す。その線引きがはっきりしているほど、コンテンツは仕事をしてくれます。
「1枚にまとめようとしたら、うちの強みが書けなかった」。その段階でのご相談がいちばん歓迎です。整理するところからご一緒しますので、お気軽にご相談ください。
