「うちも、そろそろSNSやらないとまずいですよね?」
この相談を受けるたび、私は「何のためにやりますか?」と聞き返します。すると、多くの方が一瞬、言葉に詰まります。「いや、みんなやってるし……」「集客に、なるかなと」。その曖昧さこそが、SNSが続かない本当の原因です。
投稿ネタが尽きたから続かないのでも、忙しくて手が回らないから続かないのでもありません。どこに向かって走っているのか決めないまま走り始めたから、途中で足が止まるのです。今回は、投稿を1本増やす前にやるべき「発信のゴール設定」の話をします。ツールの使い方でも、バズらせる裏技でもありません。もっと手前の、いちばん大事なところです。
「とりあえず」で始めた発信は、必ず義務になる
一番もったいないのは、目的を決めないまま「とりあえず毎日投稿」を目標にしてしまうことです。
最初の数週間は勢いで続きます。ですが、ゴールがないと、投稿すること自体が目的にすり替わっていきます。「今日は何を上げよう」が毎朝の悩みになり、反応が薄いと落ち込み、いいねの数だけが気になり始める。気づけば、本業の合間を縫って義務を消化しているだけの状態です。これほど効率の悪い時間の使い方はありません。
そもそもSNSは「やること」自体には価値がありません。価値があるのは、その先で誰かの行動が変わることです。問い合わせが来る、名前を覚えてもらう、来店のきっかけになる——そこにつながって初めて、費やした時間が回収されます。逆に言えば、つながる先を決めていない発信は、どれだけ頑張っても回収されない支出になってしまうのです。
「効率が悪いこと」がお嫌いな方ほど、ここは見過ごせないはずです。まず止まって、走る方向を決めましょう。
ゴールは「知ってもらう」「好きになってもらう」「動いてもらう」で分ける
では、どうやってゴールを決めるか。難しく考える必要はありません。発信の目的は、大きく3つのどれかに当てはまります。
- 知ってもらう(認知)——存在すら知られていない。まず名前と、何屋なのかを届けたい段階。
- 好きになってもらう(信頼)——名前は知られている。人柄や仕事ぶりを見せて、「ここなら任せられそう」と思ってもらいたい段階。
- 動いてもらう(行動)——興味は持たれている。あと一押しで、問い合わせや来店につなげたい段階。
この3つは、投稿の中身がまるで違います。認知が目的なら、目に留まりやすい切り口や届く量が大事。信頼が目的なら、失敗談や仕事の裏側といった「人が見える」内容が効きます。行動が目的なら、具体的なメニューや価格、そして「どう連絡すればいいか」を隠さず出すべきです。
自社が今どの段階にいるかで、力を入れる場所は変わります。まだ誰にも知られていないのに、いきなり「今すぐお問い合わせを」と叫んでも、誰も反応しません。逆に、もう名前が知られているのに毎日あいさつ投稿だけしていても、次の一歩には進みません。この段階の見極めは、コンテンツ制作を考えるときの土台になる部分でもあります。
SNSを「入り口」と割り切ると、ラクになる
ゴールを決めると、SNSに何を期待すべきかもはっきりします。私の考えでは、SNSは入り口であって、決め手ではありません。
SNSのタイムラインは、流れが速く、じっくり読む場所ではありません。ここで契約が決まることは、まずありません。SNSの役割は「気になる存在を見つけてもらい、次の場所へ連れていく」こと。その次の場所とは、たいていの場合、自社のホームページです。
だから、発信のゴールを「行動」に置くなら、SNS単体で完結させようとしないことです。投稿で興味を持った人が、詳しい話やサービス内容、料金、実績を落ち着いて読める受け皿——そこが用意されていないと、せっかくの興味が行き場を失って消えてしまいます。SNSで種をまいても、着地する畑がなければ芽は出ません。この受け皿としてのサイトの役割は、Web制作の考え方でも中心に置いているところです。
「SNSで全部やろう」と気負うと苦しくなります。入り口はSNS、じっくり見てもらうのはホームページ、と役割を分ける。そう割り切るだけで、投稿に求めるハードルがぐっと下がり、続けやすくなります。
ゴールが決まれば、「やらないこと」も決まる
発信のゴールを決める、いちばん大きな効能は、やらなくていいことがはっきりする点です。
認知が目的なら、凝った長文は要りません。信頼が目的なら、無理にバズを狙わなくていい。行動が目的なら、フォロワー数の増減に一喜一憂しなくていい。ゴールが1つ定まると、世の中にあふれる「SNSはこうやるべき」という無数のアドバイスの、どれを無視していいかが分かります。
これは、限られた時間で発信する小規模事業者にとって決定的な差になります。あれもこれもと手を広げるから疲れるのであって、狙いを1つに絞れば、投稿の頻度も、中身も、置き場所も、迷わず決まります。発信のゴール設定とは、実は「何をやらないか」を決める作業なのです。
そして、ゴールに沿った発信は、不思議と売り込みくさくなくなります。相手にとって役に立つ情報を、必要な段階で、必要な人に届けているだけだからです。押し売りしなくても、いい仕事といい発信を続けていれば、選ばれる理由は自然と伝わります。私たちが「営業の電話はしません」と言い切れるのも、この考え方が根っこにあるからです。
まとめ
SNSが続かないのは、根性が足りないからではありません。発信のゴールを決めていないからです。投稿を1本増やす前に、まず「知ってもらう/好きになってもらう/動いてもらう」のどこを狙うのかを決める。そして、SNSは入り口、ホームページは受け皿、と役割を分ける。この2つを整えるだけで、発信はぐっとラクに、そして成果につながるものに変わります。
「うちの場合、今どの段階を狙うべきか分からない」——そんな段階でも大丈夫です。無料の相談で、御社の発信のゴールを一緒に整理するところからお手伝いします。もちろん、こちらから売り込みの電話をすることはありません。
